トピックス


『世界水泳選手権を終えて』   2005.09.02


真の水泳世界一決定戦と称される世界水泳選手権が7月16日から31日まで,カナダの

モントリオールで開催されました.競泳,シンクロナイズドスイミング,水球,飛込の4つの

競技がおこなわれる大会に今回,水球日本代表チームのトレーナーとして帯同させてい

ただきました.

国際試合の多くは移動の長さと時差を大きな理由に約一週間前から現地に入り,調整

練習をします.今回の代表も11日に日本を発ちました.モントリオールまで直行便はない

ためアメリカのニューアーク空港を経由,乗り継ぎの4時間を含め約20時間かかります.

エコノミーのシートに背中は痛くなり,足はむくみ,眠ろうと思っても1〜2時間で覚醒.

現地に着いたら着いたで,今度は時差との戦いです.時差は11時間.ちょうど昼と夜が

逆さまです.なかなか寝つけない日々が3日間ぐらい続き,いつも食べない時間の食事と,

内容もおもいものが多いことで選手ではない自分ですら疲労とストレスが溜まりました.

想像以上に海外遠征でコンディションを整えるという課題は過酷なことであると身をもっ

て痛感することとなりました.

水球は予選を勝ち抜いた16カ国が参加します.今回,日本チームは5月のアジア選手

権で2位(1位は中国)となり,3大会連続の出場となりました.世界水泳選手権の過去

最高順位は前回のバルセロナ大会での15位,今大会ではそれを上回る14位となりま

した.
これってぴんとこないかもしれませんが,とても凄いことなんです.

水球は,泳ぎながらボールを使い,なおかつ相手とぶつかり合うコンタクトスポーツです.

水中の格闘技とも呼ばれ,水の中では,つかみ合ったり,蹴ったりというのは当然の

ようにおこなわれています.試合中水着が破れたり,出血や,鼻を蹴られて骨折する

なんてこともあります.海外にはプロレスラーのような身長190cm以上で丸太のような

腕の選手が多くいます.そんななかで戦っている選手は故障や怪我を繰り返します.

肩,肘,腰や股関節,膝など下肢の痛み,つまり全部ですね.

トレーナーという立場から試合で怪我や故障をした時はもちろん最善の応急処置を

行ないますが,怪我や故障がなくとも試合でいいパフォーマンスが発揮できるよう手

助けすることも同時に重要であると考えています.それが我々にとってもっとも難しい

課題であり,もっともやりがいのある部分であります.

チームに帯同すると,選手とともに生活し,試合中はベンチに入ります.文字通り

チームの一員ですから,試合での全ての感情を選手とともに共有しています.

勝ったときの喜びは言葉では言い表せないほど格別なものです.

ヨーロッパなどではサッカー選手のようにプロ契約選手が存在します.ちなみに

年俸2000〜3000万円くらいがトッププレイヤーの金額だそうです.サッカー選手

などと比べますとそれほど恵まれていませんが,日本では水球を職業とすること

ができないという環境から考えれば,うらやましいかぎりです.日本選手は海外

選手に比べると体格が小さく,力も弱いためつかみ合いをしていてスタミナを奪

われ,試合後半は不利になることが多くあります.そのため,選手はスタミナを

つけるために泳ぎこみ,ウェイトトレーニングをするなどして海外選手と戦ってい

ます.体格的な不利といわれていても,スピードやスタミナをつけ,そしてテクニッ

クや戦術を磨き世界の強豪相手に戦っています.

声を大にして訴えますが,彼らはテレビに特集されるわけでもなく,松岡修造さん

のレポートを受けることもありませんでした.しかし,強豪国に立ち向かう姿やポ

テンシャルの高さはすばらしいものでしたし,満たされない環境に愚痴ることもなく

『勝つために何をすればいいか』という課題だけに向き合っていた姿勢には,ただ

ただ頭が下がる思いです.いつの日か,世界の頂点で日本チームが戦い,ジャパ

ニーズドリームが達成される日が来ることを楽しみにしたいと思いました.

最後に,アジア選手権,世界水泳選手権と2つの国際試合に帯同する機会をいただ

きました.そしてクリニックでは経験できない様々なことを経験することが出来ました.

長い期間休みをいただき,皆様にご迷惑をおかけしました.この場を借りて深謝させ

ていただきます.今回の経験を今後に生かしていきたいと思います.



                                  理学療法士 吉沢 剛







トップ アイコントップページヘもどる